NEC Orchestrating a brighter world

2019.03.27 特集「コラボ with NEC」を更新しました。

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ICTで農業の生産現場を改善

トマトは世界で最も消費されている野菜であり、その量は年間1億4000万トンを超える。 今後、世界的な人口増加とともに、需要がさらに拡大すると予測されるが、現在の生産・供給体制では対応が困難で、面積当たりの収穫量アップや新たなトマト産地の開拓は喫緊の課題だ。さらに近年は地球温暖化に端を発する気候変動の影響が広がっていることから、トマトに限らず、農作物の収穫量の見通しを立てることが困難になっていた。
このような食をめぐる社会課題をICTで解決に導くのが、NECの海外大規模農場分析ソリューション「CropScope」だ。圃場に設置した、気象や土壌の変動を計測するセンサー、人工衛星が撮影した画像から得られるデータ、灌漑や施肥などの営農環境から得られるデータをもとに、コンピュータ上に「仮想圃場」を生成。農作物の生育をシミュレートすることで、その土地に応じた最適な営農アドバイスや、将来の収穫量、収穫適期を予測する。
「通常、農業の生産現場を改善するためには、同じ地域、作物での営農経験とノウハウの蓄積が欠かせず、5~6年ほどの時間を必要としていました。同ソリューションでは、NECのビックデータ解析を活用した科学的なモデリングを実現することで、1~2年という短いスパンで収穫量などの最適化を実現します。経験だけに依拠することがない、現場改善が可能になるのです」
コア技術とエンジンの開発に携わったチンは、同ソリューションがもたらすメリットを語る。
2015年3月にはカゴメと協業を開始。カゴメの現地子会社があるポルトガルのトマト圃場で、同ソリューションを活用した実証実験に着手した。学生時代は天文学を専攻していて、これまで農業に携わったことがなかったチンにとっては、大きな挑戦だった。初めて挑む未知の分野が、食の未来を拓くことにつながるのだから――。

「多国籍チーム」が徹底分析

実証実験を行うにあたって、トマト圃場には長さ2mほどのセンサーを10ヘクタールに1~2本程度の密度で埋め込んだ。センサーはソーラーパネルで電力が供給され、温度や湿度、土壌の水分量などの計測データを日々送信する。加えて、トマト圃場への散水量や肥料の量などの営農状況は、農作業者がWeb上で入力。これらの情報と地域の天候データ、作目の品種などを含めて「仮想圃場」を作り上げていく。
こうして生成した仮想圃場でのシミュレーション結果から、最適な水と肥料の量を1週間先まで「レコメンド」するのも、同ソリューションの特長だ。もっとも、実証実験の開始当初はレコメンドの評価が悪く、カゴメや現地の農学者から「水の量が少ない」などとコメントされることもあった。その原因となったのは、不確定なデータだった。
「センサーが計測するデータには、どうしてもある程度のブレや誤差が含まれます。どこまでを許容し、どこからを弾くか。チェックの基準を定めるまでは苦労しました」
また、実証実験はアメリカ、アジア、北欧など、さまざまな国から集まった「多国籍チーム」で分析が行われた。約20の畑から収集される計測データは膨大な量となり、ミスの報告や問合せがチンの元に寄せられる。状況の分析には、学生時代からの「記録する習慣」が役に立ったという。
「その日にやるべきことや実施したこと、そして結果を記録に残すようにしています。今回のプロジェクトでも、記録を振り返ることで『同じような箇所で分析がつまずいている』といった発見がありました」

不可能を可能にする喜び

実証実験が進むにつれてデータが蓄積され、徐々に予測の精度は高まっていった。また、原因分析とモデリングの改良を重ねることで、レコメンドの評価も上向いた。苗を植えて半年後となる2015年の夏。畑にはシミュレーション通りにトマトが実り、収穫量は期待を上回る結果に。1ヘクタールあたりの収穫量は146トンで、これは近隣の農地と比較して約20%程度多いとみられる。このような収穫量と収穫適期は、収穫の一ヵ月前からでも正確な予測が可能になった。
チンはカゴメから、ジャムに加工されたトマトを受け取った。
「手に取った瞬間、おぉ……と自然に声が漏れました。仮想圃場でシミュレートしていたトマトが、リアルな手応えとなって返ってきたことに感動しました」
同ソリューションは2018年度の商用化を目指し、人的作業の自動化などの調整が進められている。自然を相手にしたシミュレーションは簡単ではない。簡単ではないからこそ、壁を越える喜びがある。
「できなかったことを、できるようにする。単純かもしれませんが、研究開発の醍醐味はそこに集約されるのではないでしょうか。トマトに限らず、このソリューションを世界中の農作物に適用することで、食のバリューチェーンに貢献していきたいです。また、将来的には農業以外の分野にも、モデリングの技術が応用できればと考えています」
身につけた技術には未来を変える力がある。それはモニタの中の出来事ではなく、リアルな実感をともなうものだ。
「いただいたジャムですか? 大切に食べましたよ」
そう言うと、チンは微笑んだ。

プロジェクトスケジュール

プロジェクトスケジュール

NECの群衆行動解析技術

NECの群衆行動解析技術

プロジェクトストーリー

  • 食の社会課題をICTで解決する海外大規模農場分析ソリューション

    食の社会課題をICTで解決する
    海外大規模農場分析ソリューション

    詳細はこちら
  • インドの物流を高度化する物流可視化ソリューション

    インドの物流を高度化する
    物流可視化ソリューション

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  • 日本とアジア諸国を結ぶ光海底ケーブルプロジェクト「SJC」

    日本とアジア諸国を結ぶ
    光海底ケーブルプロジェクト「SJC」

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  • アルゼンチン・ティグレ市の街中監視システム

    アルゼンチン・ティグレ市の
    街中監視システム

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食の社会課題をICTで解決する海外大規模農場分析ソリューション

仮想圃場でトマトの生育シミュレーション
最適な営農アドバイスと収穫量予測を実現

NECとカゴメは、2015年3月から海外大規模農場分析ソリューション「CropScope」を活用した実証実験に取り組んでいる。ポルトガルのトマト圃場(畑)で計測したデータをもとに、コンピュータ上に仮想圃場を生成し、トマトの生育をシミュレート。営農を最適化して、収穫量、収穫適期を予測する。世界的な人口増と気候変動の影響で顕在化する食の社会課題にICTで挑むプロジェクトは、“期待以上の収穫”をもたらし、実を結んだ。

MISSION

ICTで農業の生産現場を改善

トマトは世界で最も消費されている野菜であり、その量は年間1億4000万トンを超える。
今後、世界的な人口増加とともに、需要がさらに拡大すると予測されるが、現在の生産・供給体制では対応が困難で、面積当たりの収穫量アップや新たなトマト産地の開拓は喫緊の課題だ。さらに近年は地球温暖化に端を発する気候変動の影響が広がっていることから、トマトに限らず、農作物の収穫量の見通しを立てることが困難になっていた。
このような食をめぐる社会課題をICTで解決に導くのが、NECの海外大規模農場分析ソリューション「CropScope」だ。圃場に設置した、気象や土壌の変動を計測するセンサー、人工衛星が撮影した画像から得られるデータ、灌漑や施肥などの営農環境から得られるデータをもとに、コンピュータ上に「仮想圃場」を生成。農作物の生育をシミュレートすることで、その土地に応じた最適な営農アドバイスや、将来の収穫量、収穫適期を予測する。
「通常、農業の生産現場を改善するためには、同じ地域、作物での営農経験とノウハウの蓄積が欠かせず、5~6年ほどの時間を必要としていました。同ソリューションでは、NECのビックデータ解析を活用した科学的なモデリングを実現することで、1~2年という短いスパンで収穫量などの最適化を実現します。経験だけに依拠することがない、現場改善が可能になるのです」
コア技術とエンジンの開発に携わったチンは、同ソリューションがもたらすメリットを語る。
2015年3月にはカゴメと協業を開始。カゴメの現地子会社があるポルトガルのトマト圃場で、同ソリューションを活用した実証実験に着手した。学生時代は天文学を専攻していて、これまで農業に携わったことがなかったチンにとっては、大きな挑戦だった。初めて挑む未知の分野が、食の未来を拓くことにつながるのだから――。

「多国籍チーム」が徹底分析

実証実験を行うにあたって、トマト圃場には長さ2mほどのセンサーを10ヘクタールに1~2本程度の密度で埋め込んだ。センサーはソーラーパネルで電力が供給され、温度や湿度、土壌の水分量などの計測データを日々送信する。加えて、トマト圃場への散水量や肥料の量などの営農状況は、農作業者がWeb上で入力。これらの情報と地域の天候データ、作目の品種などを含めて「仮想圃場」を作り上げていく。
こうして生成した仮想圃場でのシミュレーション結果から、最適な水と肥料の量を1週間先まで「レコメンド」するのも、同ソリューションの特長だ。もっとも、実証実験の開始当初はレコメンドの評価が悪く、カゴメや現地の農学者から「水の量が少ない」などとコメントされることもあった。その原因となったのは、不確定なデータだった。
「センサーが計測するデータには、どうしてもある程度のブレや誤差が含まれます。どこまでを許容し、どこからを弾くか。チェックの基準を定めるまでは苦労しました」
また、実証実験はアメリカ、アジア、北欧など、さまざまな国から集まった「多国籍チーム」で分析が行われた。約20の畑から収集される計測データは膨大な量となり、ミスの報告や問合せがチンの元に寄せられる。状況の分析には、学生時代からの「記録する習慣」が役に立ったという。
「その日にやるべきことや実施したこと、そして結果を記録に残すようにしています。今回のプロジェクトでも、記録を振り返ることで『同じような箇所で分析がつまずいている』といった発見がありました」

不可能を可能にする喜び

実証実験が進むにつれてデータが蓄積され、徐々に予測の精度は高まっていった。また、原因分析とモデリングの改良を重ねることで、レコメンドの評価も上向いた。苗を植えて半年後となる2015年の夏。畑にはシミュレーション通りにトマトが実り、収穫量は期待を上回る結果に。1ヘクタールあたりの収穫量は146トンで、これは近隣の農地と比較して約20%程度多いとみられる。このような収穫量と収穫適期は、収穫の一ヵ月前からでも正確な予測が可能になった。
チンはカゴメから、ジャムに加工されたトマトを受け取った。
「手に取った瞬間、おぉ……と自然に声が漏れました。仮想圃場でシミュレートしていたトマトが、リアルな手応えとなって返ってきたことに感動しました」
同ソリューションは2018年度の商用化を目指し、人的作業の自動化などの調整が進められている。自然を相手にしたシミュレーションは簡単ではない。簡単ではないからこそ、壁を越える喜びがある。
「できなかったことを、できるようにする。単純かもしれませんが、研究開発の醍醐味はそこに集約されるのではないでしょうか。トマトに限らず、このソリューションを世界中の農作物に適用することで、食のバリューチェーンに貢献していきたいです。また、将来的には農業以外の分野にも、モデリングの技術が応用できればと考えています」
身につけた技術には未来を変える力がある。それはモニタの中の出来事ではなく、リアルな実感をともなうものだ。
「いただいたジャムですか? 大切に食べましたよ」
そう言うと、チンは微笑んだ。

プロジェクトスケジュール
ポルトガルにおける実証実験の様子
プロジェクトストーリー
  • 食の社会課題をICTで解決する海外大規模農場分析ソリューション
  • インドの物流を高度化する物流可視化ソリューション
  • 日本とアジア諸国を結ぶ光海底ケーブルプロジェクト「SJC」
  • アルゼンチン・ティグレ市の街中監視システム