WORK
最新のAI技術を活用した 創薬事業で、 がんが確実に治る未来を 創造する。
Project Stroy 02

尾上 広祐
ビジネスイノベーションユニット ビジネスデザイン職
2018年入社
薬学系研究科(修士修了)
新卒でバイオベンチャーに入社。約3年間、ゲノムのデータ解析に従事した後、「バイオインフォマティクスの技術を活かして創薬事業に携わりたい」という思いで2018年NECにキャリア入社。現在は、AI創薬事業部にてデータ解析やシステム開発をはじめ、治験などに取り組み、主に技術的側面から次世代のがん治療法「ネオアンチゲン個別化がん免疫療法」の開発・確立を目指す日々を送っている。
Isella Lim
ビジネスイノベーションユニット ビジネスデザイン職
2018年入社
会計・マーケティング学部卒
大学でアカウンティングとマーケティングを専攻。2014年に開催されたNECのサマーインターンシップに参加し、創薬事業への将来的な参入を目指していることを知る。卒業後はシンガポールの通信会社で約2年間マーケティングに従事するが、「自分が培ってきたスキルと経験を世の中のために活かしたい」という思いを強くし、NECへ。現在は、パートナー企業との交渉やアライアンス締結、新規パートナー企業の開拓など幅広い業務に携わる。

プロジェクトの概要

日本人の死亡原因の第1位である「がん」(*1)。NECは人間に本来備わっている免疫の力を利用してがん細胞を攻撃する治療法「免疫療法」の確立を目指し、20年以上も前から地道に研究を続けてきた。そんなNECが、「ネオアンチゲン(*2)個別化がん免疫療法」に乗り出す。カギとなるのは、個々の患者によって異なる「ネオアンチゲン」。ネオアンチゲンは、がん細胞にしか発現せず、免疫機構が正常細胞を攻撃する可能性が低くなる。そのため、正常な細胞を傷つけることなく、がん細胞だけを攻撃できる可能性がある。ネオアンチゲンを特定する予測システム。それを支えるAIエンジンの進化を背景に、日本企業としては初となる「個別化ネオアンチゲンワクチン」の治験も開始。尾上とイセラはその推進役として、自身のスキルと経験を最前線で注ぎ込んでいる。
*1:厚生労働省「平成30年(2018)人口動態統計月報年計(概数)の概況」より
*2:がん細胞の遺伝子変異に伴って新たに生まれた「がん抗原」。正常な細胞には発現せずがん細胞のみにみられ、またその多くは患者さんごとに異なる。
起点

積年の夢である創薬事業を本格スタート

ゲノム解析における技術発展を背景としたとコスト減、AIエンジンの急速な強化などを追い風に、2019年に創薬事業への本格参入を表明。掲げるビジョンは『AIを用いた免疫治療領域のInnovation Firmになる』。

課題

患者ごとに異なるネオアンチゲンをいかに選定するか

一人ひとり異なるがんの目印、ネオアンチゲン(抗原)をターゲットにワクチン投与するためには、治療に有効な抗原をどのように選定するかが大きなカギ。しかし、がんの抗原は個々の患者によっても、がんの種類によっても異なる。そのため、個別化がん免疫療法確立の決め手となっていた。

解決

独自性の高い最先端のAIエンジンが見出した光明

大学との共同研究によって長年蓄積してきた質の高い実験データとノウハウ、高精度の機械学習技術「グラフベース関係性学習」を活用した「ネオアンチゲン予測システム」によって有効な抗原選定が可能となった。

結果

ついに臨床試験をスタート。踏み出した確かな一歩

「個別化ネオアンチゲンワクチン」をフランスの企業と共同開発し、日本企業初となる臨床試験を開始。短期間に最適な薬を作って投与することが可能となる未来に向け、大きく舵を切った。

気づき

未知なる地平を切り拓き、社会に貢献する使命

ふたりが立つ現在地は、目指すゴールの途上。しかし、NECこそがその技術と熱意によって次世代のがん治療法を確立し、社会に貢献すべき存在であるという矜持を胸に前進し続ける。

PROJECT STORY

  1. Starting point

    NECが創薬に挑戦する。
    その意義に共感した。

    NECの創薬研究の歩みは1998年までさかのぼる。以来、約20年の月日にわたって機械学習の創薬分野への応用を目指し、アカデミックパートナーとの共同研究を地道に続けてきた。2016年には、がんペプチドワクチンの臨床試験を行うベンチャー企業を設立。創薬事業への本格参入に向けた気運が高まっていった。2018年にNECに入社した尾上はこう語る。「それまではバイオベンチャーでゲノム解析に従事していましたが、自分が培ってきたバイオインフォマティクス(*)の技術を活かして創薬に携わりたいと考えたんです」。大学時代にNECとの接点があったイセラも口を揃える。「自分自身のマーケティングスキルを世の中のために活用したいという思いで入社を決めました」。そして2019年、NECは創薬事業への本格参入を決断する。
    *バイオインフォマティクス:生命情報科学と訳されることもある。生物学のデータを、情報科学の手法によって解析する、学問及び技術。

  2. Problem

    個別性の高い、
    有効なブレークスルーを求めて。

    人間が本来持つ免疫の力でがん細胞を攻撃する免疫療法は手術、放射線、抗がん剤に次ぐ「第四の治療法」と呼ばれ、近年世界中から注目を集めている。がん細胞の表面にあり、がんの目印となる「抗原(ネオアンチゲン)」と呼ばれるたんぱく質の分子はがんの種類や患者ごとに異なるため、NECが目指す個別化治療の実現には有効な抗原をどのようにして見つけ出すかが大きな課題だった。しかし、ふたりには確信にも似た自信があった。「ゲノム解析コストが下がっていることもあって多くの企業が臨床試験を始めていますし、競合も数多く存在します。しかし、大学との共同研究によって築いたNEC固有の質の高い実験データベース、データマイニングやAIの予測技術といった比類なき技術力によって克服できると思っていましたね」。

  3. Solution

    NECだからこその独自性。
    最先端のAIエンジンが見出した光明。

    患者のゲノム情報を解析し、一人ひとりにワクチンを最適化させる「個別化がん免疫療法」の確立を目指して。その切り札となったのは、NECが開発した「グラフベース関係性学習」を活用したAIエンジン『ネオアンチゲン予測システム』だった。「このAIエンジンはNECが独自に蓄積してきた実験データによる学習に加え、ネオアンチゲンの多面的な項目を総合評価し、患者それぞれが持つ多数の候補の中で、有効なネオアンチゲンを選定することができます。これにより、個別化ネオアンチゲンワクチンの開発に向けて高いハードルを越えることができたんです」と笑顔を見せる尾上。約20年にわたる創薬研究が、次なるフェーズへと大きく歩を進めた瞬間だった。

  4. result

    世界的企業が認め、
    大きな信頼を寄せる技術力。

    100年以上の歴史を持つフランスのバイオテクノロジー企業のTransgeneが「個別化ネオアンチゲンワクチン」を共同開発するパートナーに選んだのはNEC。数多くの企業、技術との比較検討において『ネオアンチゲン予測システム』の持つ明らかな技術優位性に魅力を感じたことが最大の決め手となった。「NEC、そして高い技術力に対する確かな信頼を感じました」。Transgeneとの交渉を担当したイセラは、その言葉から、期待の大きさを目の当たりにしたという。AIによる「個別化ネオアンチゲンワクチン」の共同開発は順調に進み、2019年末からは日本企業として初となる臨床試験がスタート。「オーダーメイドでがんを治療する」という画期的な治療法の誕生、確立に向けた一挙手一投足を世界が見守っている。

  5. awareness

    創薬事業の発展を通じて、
    豊かで公平な社会の実現に貢献する。

    「前例が無いので、何事もディスカッションしながら決断していくしかありません。でも、それが楽しいんです」。目まぐるしくもやりがいのある日々は、イセラにとって大きなモチベーションを感じるものに他ならないようだ。彼女は続ける。「NECが目指すのは単なるITによるサービス提供ではなく、創薬事業そのものを発展させることです。新たなパートナー開拓を通じて、より高度な臨床試験の実現可能性を模索していきたいです」。また、尾上は「現在は限られたがんの臨床試験にとどまっていますが、将来的には患者数の多いがんや希少がん、そして感染症や自己免疫疾患にも適用領域を拡大していきたいですね。それこそがNECにしかできない、そしてNECがやるべきミッションだと思うんです」と、見据える夢と決意を力強く語った。